魔法の声かけ

 支援員として学校のクラスで子どもたちと過ごしていると、ほんのちょっとの大人の声掛けで、戸惑っている子がポン!と次のステージに上がれる場面にたくさん出会います。その時の子どものほっとした表情を見ると、私も嬉しくなります。素敵なひとコマをご紹介します。

 

 小学3年生国語 「詩を作ろう」の授業。どうしても書くことが思いつかず、頭をかかえているR君。鉛筆を持ったままじっとうつむいていました。周りの子どもたちはすでに下書きを終え、画用紙に清書しています。

 

「どうしたの。」

声をかけてみました。

「何も思いつかない。何を書けばいいのか、全然思いつかない。」

R君はうつむいたまま、鉛筆をノートの上で転がしています。

「じゃぁ、ちょっと窓から外を見てみようか。」

と、R君と一緒に廊下の大きな窓に向かいました。窓からは、学校の隣にある小さな公園が見えます。外は、雨。誰もいない静かでいつもとちがうちょっと寂しい公園でした。

 

「雨が降ってるね。」

と、私。

「うん。」

R君は静かに頷いています。

「誰かいるかなぁ。」

と聞いてみると、R君は答えます。

「誰もいないね。」

そして、私。

「どんな音が聞こえる、耳を澄ませてみて。」

R君が

「うーん、聞こえないよ。あ、でも。ピチャン ピチャンっていってる。」

と、窓に可愛い手と耳をくっつけました。

「そう、今言ったことをノートに書いてみたらいいよ。」

私がそう言うと、R君は急いでノートと鉛筆を持ってきました。

 

そんなふうに静かに会話をしながら、窓の外から外を眺めて15分。

R君は、ひとつの素敵な詩を書き上げました。

 

 

  雨の公園

 

ピチャン ピチャン

ピチャン ピチャン

 

今日は 誰もいない

 

ピチャン ピチャン

 

水たまりが ゆれてる

 

ピチャン ピチャン

 

今日は 雨

 

 

 

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